めまい治療
外来で診察するめまい疾患の中で、最も多いのが、良性発作性頭位めまい症(BPPV)です。ベッドから起き上がったり、寝返りをうったりして、頭を動かす際に、持続時間1分以内の短い回転性めまいが起きる病気です。難聴や耳鳴りの症状はなく、再発しやすい病気です。BPPVの中でも、後半規管型のものであれば、エプレー法という浮遊耳石置換法という治療法が有効です。家庭でおこなえる運動療法もあります。
当院のめまい治療の診察の流れは以下の通りです。
1詳細な問診(めまいは問診がとても重要です、問診で8割程度、疾患を絞り込めます)
2耳・鼻・のどの耳鼻科診察にて中耳炎や脳神経症状の有無を確認
3指鼻試験、ロンベルグ試験等で、失調症状の有無を確認(脊髄障害や小脳障害の鑑別)
4聴力検査や耳鳴検査にて、メニエール病などを鑑別
5最後にベッドで頭の向きを換えながら、眼球の動きを調べる、頭位眼振検査・頭位変換眼振検査を、特殊な眼鏡(赤外線CCDカメラ)で調べます。
眼球運動は動画として、説明の際、患者さんに見ていただきます。治療は西洋薬だけでなく、漢方も取り入れておりますので、長く服用しても安心です。
味覚障害
食事は現代社会においては特に人生の大きな楽しみであり、味覚が損なわれると、大きな不安におそわれます。味覚障害を診断するためには、甘味、塩味、酸味、苦味の4つのうち、どの味覚が、どの程度低下しているのかを、舌の前後左右で、別々に調べることが、必要です。前後で調べる理由は、舌の前方2/3は鼓索神経の、後方1/3は舌咽神経の支配領域で、神経支配が異なっているからです。当院ではそれが可能な、ろ紙ディスク味覚検査を実施しています。手間のかかる検査ですが、この検査抜きには、正確な診断はできません。味覚障害の原因には薬剤性、中枢性(脳の障害)、極端なダイエット、口内乾燥症、舌炎、ビタミン欠乏等も挙げられますが、亜鉛や鉄の欠乏は最も重要であり、当院では採血により、血液中の亜鉛や鉄濃度を精査して、亜鉛欠乏があれば、亜鉛の補充を目的にプロマックという亜鉛製剤を投与します。漢方製剤を併用することもあります。早期に治療したほうが成績もいいため、味覚障害になったら、早期の受診をおすすめします。
補聴器外来
高齢化社会を迎え、老人性難聴の患者さんは増加の一途をたどっています。本来であれば、補聴器が必要であるにも関わらず、難聴のまま、コミュニケーションに支障をきたしながら、不自由な生活を送っておられる高齢者は数多くおられると思われます。コミュニケーションに支障が出ると、口数が減り、高齢者は引きこもりがちになります。これまでにも、補聴器を装用したとたん、パッと表情が明るくなり、感情豊かになられた高齢者を数多く経験してきました。聴力やコミュニケーションによる人との関わりが、脳の活性化に及ぼす影響は、測り知れないものがあると言えます。聴力検査の結果、約40dB(デシベル)以上の難聴が存在する場合は、補聴器の適応になりますが、左右どちらの耳に補聴器を装着するかを決定するために、言葉の聞き取りの検査(語音検査)を行ないます。左右を決定した後、患者さんの聴力に応じて、補聴器の設定を行い2週間無料で貸し出します。家庭や職場で、実際に2週間試してみて、気に入らなければ、遠慮なくご返却して下さい。気に入って頂ければ購入となります。
なお当院では専門の補聴器会社(第1・3水曜 午後2時半~リオン補聴器、第2・4水曜午後2時~シーメンス補聴器)の認定補聴器技能者が補聴器の貸し出しを行なっておりますので、ご安心下さい。
突発性難聴
今まで健康に生活していた人が、ある朝目覚めると突然片方の耳が聞こえなくなっている。あまり突然のことで、最初は電話の受話器が故障していると勘違いし、反対の耳で受話器をあてるときちんと聞こえるため、そこで初めて難聴に気づくというケースもあります。また難聴に気づかず、突然耳鳴りがすることで気づかれる場合もあります。高度な難聴がある場合は体がふらついたり、天井がぐるぐる回ったりとめまいを伴うこともあります。
突発性難聴は年間3~4万人が罹患し、しかも40~60歳代の働き盛りの人に多く発症する疾患で、決して他人事ではありません。発症から2週間以内に治療を開始しないと、改善しないこともあり、早期発見・早期治療がすべてといってもいい病気です。
原因は内耳の血流障害による酸素欠乏説や、一生に一度しかかからないことからウィルス感染説などがありますが、未だ全容は解明されていません。
治療はステロイド(副腎皮質ホルモン)剤を中心に、ビタミンB12や代謝改善剤、血流改善剤等を組み合わせて行います。それでも改善が期待できない場合は総合病院や大学病院を紹介させて頂き、入院の上ステロイドの点滴をしたり、高気圧酸素治療を行ったりもします。私が以前勤務していた大学病院では入院の上ステロイドの点滴と高気圧酸素療法を実施しており、ステロイド単独より両者の併用療法の効果が高いことが判明し、欧州の論文に発表しました1。
参考文献1
Fujimura T, Suzuki H, Shiomori T, Udaka T, Mori T (2007) Hyperbaric oxygen and steroid therapy for idiopathic sudden sensorineural hearing loss. Eur Arch Otorhinolaryngol 264: 861-866
急性低音障害型感音難聴
ある日突然、耳栓をしたような、耳が塞がったような症状が起こる病気で、通常左右どちらか一方の耳に起こります。しばしば軽度のふらつきを合併することもあります。比較的若い女性に多い疾患ですが、男性に発症することもあります。原因については、ストレスの関与が指摘されていますが、本当の原因は未だ、解明されていません。
聴力検査で、低い周波数(低音域)に軽度~高度の難聴を認めます。よく似た病気に突発性難聴という病気がありますが、突発性難聴よりも低音障害型急性感音難聴の方が治りやすい傾向にあります。しかし症例によっては治りにくいこともあります。
治療は程度に応じて、ビタミン剤や代謝改善剤に加え、ステロイドを使用することもあります。発症してから、2週間以内に治療しないと、治療に反応しないこともあるため、耳のつまり感や違和感を感じたら、すぐに耳鼻科を受診することをお勧めします。
症例によっては、何度も繰り返す場合もあり、繰り返すうちにメニエール病に移行してしまうこともあるため、注意が必要です。