日本歯科医師会(日歯)の大久保満男会長は3月14日、東日本大震災で身元の分からない遺体が多数収容されていることを受けて、全国の歯科医師会に対し、現地で検視に当たることのできる会員の出動を求める通知を送付した。
大久保会長はこの日、厚生労働省で記者会見を開き、これまでの歯科医師会の活動を報告した。それによると、震災発生直後に日歯内に災害対策本部を設置したほか、岩手県歯科医師会が12日の早朝から8組のチームを最も被害の大きい宮古市と久慈市、陸前高田市に派遣。このうち、宮古市では約30人の遺体について歯科的検視に着手したものの、その他の地域では足を踏み入れることすら困難な状態だという。また、宮城県歯科医師会や福島県歯科医師会でも順次、収容された遺体の身元確認作業に当たっている。
しかし、日を追うにつれ遺体の収容数が増え続けており、より多くの検視作業が必要となるため、13日には被災地から警察庁を通じて、11人(岩手県7人、宮城県4人)の派遣要請を受け、日歯では関東一円から派遣メンバーを確保した。
さらに日歯では、今後も身元不明者の大幅な増加が見込まれるため、14日付で全国の歯科医師会に対し、各会から派遣が可能な会員のリストアップを要請。その際、日ごろから警察歯科医として検視作業の経験がある会員についても報告するよう求めている。
大規模災害時の、多数の身元不明者の確認作業には、歯型や治療痕による鑑定が有効とされているが、それらの確認には、照合する治療カルテなど生前の記録が必須だ。しかし今回の場合は、地震後の津波でカルテそのものがなくなっているケースが多く、一人ひとりの身元の確定は困難を極めるとみられる。
大久保会長は会見で、「まずは遺体の特定をして家族の元にお返ししたいという思いと、故人にとっても、荼毘(だび)に付される前に身元が特定されることが人として最後のアイデンティティと考える。それが歯科医としての責務だ」と述べた。