◇学会発表は1963年秋
物事が初めて起こった土地を「発祥の地」と呼ぶようです。おめでたいことを指すようなので、誤った使い方かもしれませんが「日本のスギ花粉症の発祥の地は日光」と宇都宮に着任してから知って、驚きました。
古河電工日光電気精銅所付属病院(当時)の斎藤洋三医師(耳鼻咽喉科)が1963年秋、神戸市で開かれた日本アレルギー学会で、「スギ花粉症の発見」として発表したのです。斎藤医師はこの年に同病院に着任しました。3月になると、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみを訴える患者が増え始め、4月にピークを迎えました。当時の診断は「アレルギー性鼻炎」だったとのことです。
斎藤医師は看護師に尋ねたり、過去の記録を調べ、毎年同じ時期に患者が増えていることを突き止めました。スギ並木のそばに住んでいる人もいたようです。海外では同様の症状があると文献で調べた斎藤医師は、患者の血液を検査したり、スギの黄色の花粉を患者にさらして、同じような症状が再現できたことから、スギ花粉症と名付け発表しました。
78歳になる斎藤医師は、今も東京都内の病院でアレルギー外来を担当し、花粉症の治療に当たっています。先日、お話しをうかがったところ「もう47年以上も前のことで、あまりよく覚えていないが、最近は患者さんが増え、症状も重くなった」と心配しておられました。
環境省によると、今年春のスギとヒノキの花粉の飛散量は、昨年夏の日照時間が長く、気温が高かったため、大変多いそうです。宇都宮市は昨年の約2倍と予測されています。私は幸い、花粉症ではないのですが、花粉が多く飛ぶ年ほど、花粉症になるリスクが高まるそうです。ここ宇都宮が私にとって花粉症の「発症の地」にならないよう祈るばかりです。
【宇都宮支局長・吉川学】